textile 【 月のある風景 】

「昨日風景を見たんだ。」
とLINE。
えっ？
どういうこと？
普通に考えればその文章は理解できるが、
唐突にそー言われるとなんだか何を見たのか？
風景って何？と。
返信に困っていると、
「最近風景見た？」
えっ？
どういうこと？
今だってカーテンを開ければ窓辺から風景らしき暗闇が見えるけど。
でも日々忙しく風景を見たなんて実感が全然無い。
考えてしまった。
海に沈む夕日、
山々に陰る白雲、
霞かかる平原、
想像しても湧く画像はやはりチープだ、
フリーの画像みたい。
本当に忙しくて慌ただしくていつもの電車を乗り逃しただけでイラっとしてる朝。
ひとつ遅い電車に乗ればさっきからブルっているLINEのチェックに余念がなく気づけば車中はほぼスマホ画面注視。
「昨日君が醤油を買ってくる事を命じた時だ。」
ん？
何だか嫌な予感。
「ふてくされて出たのでスマホも持たずサイフだけで早歩きで出たんだ。」
あー…。
送り主の彼は最近同棲を始めた。
その相手も友人で私のLINEにもそのアイコンが並んでいる。
あっ！
アイコンが同じ！
デフォルトの黄色アイコン。
私をその同棲相手と勘違いしている。
あー…。

もう！
要約する。
要するに彼女の命じで醤油を買いに出た夜、
ふてくされて醤油以外にビールを買って帰りの公園のベンチで飲み始めたらしい。
んで身を探ればスマホがない。
諦め見上げれば月。
あーこの月を見せるためにきみは醤油を命じたのか、
君は素晴らしい、
だと。

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PAMMのアトリエ打ち合わせでこの「月のある風景」柄を見た時、
別件で書いていた上記の未完のコラムを思い出していた。
アトリエではこのデザインをまだ見ぬ旅先の夜の風景とし、
心の思い出と遥か彼方感とそこでの所在無さ、
少しチープで旅先でのお土産屋さんなども意識したとか。
ヘタウマ。
BGMはなんと唱歌。
「おぼろ月夜」などなど。
なるほど、
小学生の頃の音楽室。
こんなポスターが貼ってありそうだ。

このコンセプトコラムを書くに前半と後半が合致したのは、
自分も風景を見ていない日常に気付いたから。
手元の小さな世界ばかりではなく風景(遠景)を見て大らかに考える時も持たないと。
そして部屋でひとりまだ見ぬ遥か彼方を夢想し所在無さで心まどろむ楽しい夜を過そう。
スマホを置いてビールを持って月を見に行こう、と。

つくづく思う。
このテキスタイルが、
そんな気持ちを共有できるパジャマになったら良いなと。
夜に、
風景を。

そして何気にLINE誤送ありがとう。

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