2023 A/W collection「生活」

 

2023.06.10 (土)
2023 A/W インスタレーション「生活」

アイテム一覧

今日はPAMMの新作発表会にいらして頂きありがとうございました。
本当に一生懸命作ったので見て頂けて嬉しいです。

PAMMの新しい服を着てこれからどんな生活が始まるのかどんな事が起こるのか、
良いことも悪いこともそれ全て「生活」です。
良いことも悪いことも人に等しく同じ数だけあると、
その良し悪しを決めるのはその本人の考え方次第だと本で読みました。
「生活」は自分次第。

来場のお礼のお土産はパロサントです。
火をつけて煙を立てて香ります。
あなたの「生活」で良いイマジネーションが湧くように。

改めて。
本日はご来場ありがとうございました。


PAMM
スタッフ一同より

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direction:PAMM
styling:PAMM
model:riku tanaka / tettaro / kaho ito / nairu / haru. / miyu ogawa
hair make:misato awaji
photo:mariza suda
movie:ryo mitamura
music:PAMM JAM RADIO(haru.)
special thanks:space edge
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【「生活」は人  】

 

「服を見せるより人を見せる」。

服を着るのは人であり、

僕らPAMMは服を作ることで人を作っていると自負します。

「生活」は人。

だから服が見づらいとしても人を見ていただきました。

今回のモデル=演者はPAMMの夜を具現化すべくそのテーマに共感し集ってくれました。

演者ですから彼らは演じたわけですが、

誰を演じたか?

PAMMのあるそれぞれの夜を「生活」を演じたわけです。

それをここで少し紹介したいと思います。

これを読んでくれているあなたは今どうしていますか?

渋谷で見たPAMMの夜「生活」をこのプロットで思い出してみてください。

「生活」に正解はありません。

人に見せたくない夜こそ「生活」です。

PAMMはそこに寄り添います。


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Riku

 

大学進学を理由に地方から東京に出てきた一人っ子。
その大学で演劇部に入り演技に目覚め今や期待の新人舞台俳優だ。
あまり苦労をせずとんとん拍子でここまで上り詰めた。
大学の文学部を卒業している秀才でもある。

とはいえ実は自分の演技や顔に自信が持てないでいる。
それが理由かわわからないが毎夜に鏡を見てメイクの勉強に励んでいる。
今日は歌舞伎役者とジョーカーと女装(女性メイクではない)の練習だ。
真剣にそれに励むもやはり自信が持てず洗顔を繰り返す。
出来上がった顔にそれふうの顔芸を鏡に向かってするが出るのはため息ばかり。
顔芸は速度を増してゆく。
そしてそれを繰り返すうちにそれが勤勉なのか趣味なのかわからなくなってきて不安を感じている。
演技とは変身なのか?
自分自身の記憶のバリエーションなのか?
洗顔で濡れた顔を鏡に映してぼたぼたと雫、
考える時の顔は好きだ。
これがいいじゃん!
ぼたぼたと雫。

臆病者で時々不意に後ろを振り向く。
夜に鏡を見ると後ろに見てはいけないものが映ると、
かつて実家で母親が呟いていたことを今も信じている。

趣味は読書と掃除。
畳の部屋が好きでちゃぶ台に座布団、
そこに正座の日常。
ベットではなく布団派。
餌をあげる際に逃げてしまったジュウシマツの小鳥「ちょぼん」、
今にも帰ってくるのではないかと鳥籠の蓋を開けたままにしている。

余談だが、
恋愛経験は女子2人男子1人とバイセクシャルである可能性に不安を感じている。

 

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Tetsu

 

ロックバンド「鉄アレイ荒れ」のボーカル。
純粋なブルースロックのバンドだが受けた取材ではグランジ再来と答えている。
まだバンドでは食えずバイトとして肉体労働をしている。
頼まれると断れないタイプでバイトに追われてバンドの活動がイマイチなことに少しイライラ。
ボーカリストとしてサイドギターを持つのが夢だがまだまだ練習が足りない。
癖は舌打ち、
彼女にはそれを揶揄されてその時も舌打ちしてしまう。
声の調子を気にするくせにヘビースモーカー。
調理は好きだが大好きなお酒を呑む毎日であまりそれができていない。
今も結構酔っている。
基本的に部屋では半裸。
時々チラッと鏡を見てその半裸を愛でている。


今はメンバーからの電話を待っている。
飯に行こうとの誘いだが最近関係が上手くいっていないので決定的な提案をされないかと不安だ。
飯を誘ったバンドリーダーの名前は「センパイ」。
下北のライブハウスで出会った。
まだ歌ったことがないテツくんを強引にボーカリストにしてメンバーを集めて「鉄アレイ荒れ」を組んだ。
「センパイ」は時間にルーズで約束はほとんど守られたことがない。
ギターテクやその知識は尊敬に値するがそれ以外は全て軽蔑と言っていいくらい気に食わない。
「センパイ」もそれがロックだと勘違いしてるから扱いづらい。
「センパイ」に教えられたギターのカッコいい持ち方をして鏡を見る。
ギターを低く持つか高く持つかで悩む。
まだ弾けないくせに。
電話がブルったがバイト先からのLINEだった。
またしても舌打ち。
ちなみに「センパイ」は歳下。

 

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haru.

 

自分でビジネスを立ち上げ今その主として日々忙しくしている。
少人数ながらの手の届いた彼女らしいプランはビジネスと言えるか?と言うくらい自然体だ。
学生時代から疑問や心配事を友人たちとディスカッションする時間があり、
それらの問題提起力が今の彼女のビジネスの良風となっている。

そんな仕事の一つとして、
ラジオのディスクジョッキーとして深夜ラジオを週一で担当している。
自然体で話す彼女のラジオは同世代のリスナーが多く、
友人として語りかけてくるラジオの声は深夜ラジオということもあって人生相談コーナーが人気だ。

大手の放送局の中に彼女専用のラジオブースを作ってもらい、
自分の部屋からリラックスムードでをテーマにしての放送は今日も今から本番だ。
夜24時start。

ジングルが鳴りマイクに語りかけ始める。
椅子にあぐらをかいてのトークだ。
靴下が緩んでいるのが今の彼女の気分を垣間見せている。
髪をかき揚げ笑いながら、時に部屋内を立ち歩きながら原稿やメールを読む。
着ているものを脱いだり羽織ったりもそれをトークのネタに変えてしまう変幻自在ぶり。
今着ているのがパジャマでありそれをあえて話すことで夜を共有する。
飲み物やお菓子をつまみつつその咀嚼音さえマイクに通す。
時々窓の外の夜を見ながらのトークは電波以外でもリスナーと繋がっているようだ。
友達思い。

笑い声の絶えないトークで前半が終了。
途中に入るニュースと交通情報のコーナーでは流石に少し疲れを見せるが、
後半はいよいよ人気の人生相談コーナーから始まる。
少しだけ姿勢を正して、
さっきまで着ていたパジャマの上にニットを羽織りきちっと上までボタンを閉める。
一人なのに鏡を見る。最近お気に入りの白いピンで前髪を留めた。
性を話題にしたかなりシリアスな、
このリスナーだけの問題ではない今の世の中の隠れた心配事にも通づる相談だ。
時にシリアスに眉間に皺を寄せつつ、開き直るように両手を広げて天を仰ぎ、
優しい笑顔でマイクに向かい、
「私はこう思うの。」

いよいよエンディングだ。
「本当に楽しく生きてゆくにはこんな夜を、
夜を大切にすることです。」
エンディングのテーマ曲、大貫妙子の「都会」が流れるスタジオで、
https://youtu.be/ck11pWTc2g8
あれ、彼女少し泣いてる?

 

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Kaho / Nairu

 

私の心には二人の少女が住んでいる。
みんなもきっとそうでしょうけど。

二人を仮にABとする。
Aは良い子Bは悪い子。
Aは光Bは陰。
Aは◯◯Bは◯◯。

今日も私の心の中を見てみよう。
彼女たちを見るのは自分一人の夜。
彼女たちは一見どちらがAでどちらがBなのか見分けがつかない。
同じような黒くて真っ直ぐなロングヘアに同じように白い肌。
ちょっとだけ微笑みを含んでいるような真顔。
悲しそうではない。
でも感情を読み取れるほどその表情に表現はない。

A.Bを見分けるのはその行為から。
今日は何故だか手鏡をずらっと並べている。
あ、一人が手鏡を汚し始めた。
自分の顔を消すように鏡面を見えなくしている。
こちらがBだ。
何度も何度もその汚しに上塗りを重ねてゆく。
やっていることは乱暴なのにそのおすまし顔は変わらない。
姿勢も良く毅然としている。
その佇まいとその行為のコントラストが薄気味悪い。
鏡を汚すという行為についその意味を読解してしまう。
汚した鏡を元の位置に戻す時の足取りは軽快、
楽しみをしているかのようだ。
Bはこちらだ。
ではAは?
やはり、その汚れた手鏡を丁寧に磨き始めた。
病的なまでにそれに集中し、
上品に始めたその磨く行為もやがて速度が増してくる。
はっと我にかえってその速度を落とす頃にはすっかりと鏡面が輝き始めその素顔を映す。
Aも姿勢が良く時に優雅で優しい。
磨いた鏡を元の位置に戻す時の足取りは異常なほどゆっくりだ。
AとBは古めかしい椅子に向かい合って座っている。
ほとんど目を合わせない。
お互いの存在に気づいていないかのようだ。

汚すBと磨くAのそれぞれの行為に時差がで初めている。
Bが汚した手鏡がどんどん増えてゆきAの磨く行為がそれに追いついていない。
今日の私はBだ。
悲しい。

 

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Miyu

 

私は私が好き。
自分が映る鏡は友達。
買ったりもらったり拾ったりして集めた自分を映す鏡が自分をずらっと囲んでいる。
色々な角度の自分を見たい。
合わせ鏡に写った私は最高。
合わせ鏡はここではない何処かのよう、
そこに映る私。
ダンスをしたり体の不思議を試したり指や足指で喋ったり、
背中を見たりうなじを見たり、
とにかく自分を見ていると落ち着く。
動くことに疲れて休む時もずっと自分を見ている。
そのお陰か元々そうだったから不思議な格好ができる、
体は異様に柔らかい。
身体を見ているのでヘアスタイルはボサボサ、
それがまた良いと思っている。
伸ばした手の肩の張りがいい。
伸ばしたきれいな足のピンと力を入れた爪先がいい。
絡めた両腕の張りと皺のコントラストがいい。
おかしな動きをすればするほどいいところの発見に繋がるから、
それがやめられない。

仕事とは別にいわゆる身体表現の発表を定期的に行なっており、
多くはないが顧客がつき小規模ながらチケットはいつもだいたい完売する。
仕事中はそんな自分を隠してはいるが、
時に鏡に出くわしてしまうと隠しきれないナルシスティックビームが出てしまう。
部屋では自分以外の物の存在を消したくてとにかく透明な物を揃えている。
アクリル製の家具、
ビニール、
ガラス製品、
ペットボトル…。
それが理由で部屋ではほとんど料理はせずもっぱらコンビニ飯ばかり。
その透明の蓋がたまらない。
透明なものは時々自分を映してくれるのでそれに気づいたら容赦無くナルシスティックビーム発射。
ガラスの花器を手に取って、
それを愛でているのではなくそこに映る自分を探しているのだ。

恋人はいない。
かつては同棲をする男性がいたがこのナルシスティックビーム照射にて退散。